事務所通信 平成18年11号掲載
個人より会社は税金が重い? 
 
先日、建物を収用された会社の申告書を作成しました。
 収用とは、国・県等が公共事業を行う際に土地建物等を買収することです。通常、5000万円までは無税となります。
 ところが法人の場合、無税とならないケースがあるのです。収用によって出た利益を留保していたことに対する税金(留保金課税)があるからです。
 
 留保金課税とは
、同族会社の場合、利益が出ても、オーナーである株主が、その利益部分を配当金として受け取ることにより課税される所得税を逃れるために、あえて配当をせずに社内に留保したことに対する課税です。通常の利益に対する税金の他に課せられる税金です。

 しかし、中小の同族会社が、利益を留保することが、なぜいけないのでしょうか?いざというときには、私財をなげうってでも会社を守らなければならないのが同族会社です。どういう時代が来ようと、絶対に倒産しない強固な財務体質をつくっておくことが、なぜいけないのでしょうか?私には理解できません。個人事業者にはこうした課税はありません。
 結局、この会社は通常の所得に対する課税はありませんでしたが、留保金課税が発生し、100万円単位の税金を支払うこととなりました。

  しかし、考えてみるとおかしな話です。仮に留保金課税がやむを得ないとしても、収用によって得た資金は、通常の利益の結果による資金と違い、代わりの資産を購入する資金です。個人事業者は5000万円まで課税されないのに対し、なぜ法人はこういうことになるのでしょうか?
 18年3月号に書いた実質一人会社の増税といい、今回の留保金課税といい何かスッキリしません。

 ところで、今回これを書いている途中で、財務相が留保金課税を廃止の方向で検討している旨の記事が新聞に掲載されました。やっとかという思いと同時に、是非実現してほしいと思いました。

 


所 長  須 田 幸 英
事務所通信 11月号掲載
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